システムの概要・背景
航空身体検査は航空法に定められた制度であり、航空機を運航するパイロットは、身体検査(航空身体検査)を定期的に受検し、心身が健全な状態であることの証明を専門医(航空身体検査指定医)から受けなければ、航空業務を行うことができないとされています(航空法第31条)。このため、全国のパイロットが、常時、全国各地の航空身体検査指定機関において航空身体検査を受検しています。
航空身体検査の適切な実施は空の安全にとって極めて重要ですが、その情報を国が一元管理するシステムがこれまで無く、このため残念ながら、航空機事故の原因として航空身体検査の際の申告漏れが指摘されたり、管理の不備やミスによる内規違反などが指摘されることがありました。
当社は、国土交通省航空局と議論、検討を重ねるとともに、全国の航空身体検査指定機関やエアラインの理解と協力を得て、国内の全ての航空身体検査の情報を国が一元管理するシステムを構築しました。
もたらされた価値
- 正確な申告の促進、申告漏れ、虚偽申告の防止
- パイロットの負担軽減、利便性向上
- パイロットの医学情報の管理の厳密化
- 指定医の事務負担を軽減し、専門的、医学的判断により集中できる環境の実現
- 指定機関と指定医との責任範囲を明確化するとともに、指定機関の管理業務を効率化
- エアラインの業務負担の軽減、効率化
- 申請情報から検査結果までが完全に正規化されたデータとして記録されることにより、航空身体検査制度のより確実な運用を可能に
- 検査情報の適宜適切な参照を可能とし、指定医による適切な医学判断に貢献
- 航空医学の知見の蓄積への貢献
これにより、空の安全と航空交通の発展に貢献しました。
全国約100の航空身体検査指定機関のうち半数以上の機関での導入が進み、近い将来において我が国の全てのパイロットが本システムを用いて航空身体検査を受けることになります。
技術的特徴・先鋭性
堅牢さ+ユーザーフレンドリーで使いやすいシステム
設計、開発に際しては、業務系システムに求められる堅牢さに加え、自社Webサービスの運営により培った知見を活かし、「役所のシステム」のイメージを覆すユーザビリティに優れた使いやすいシステムを実現し、多くの航空身体検査指定機関、指定医、航空従事者から好評を得ました。これにより、国が押し付けて使わせるシステムではなく、ユーザーに進んで使ってもらえるシステムを実現しました。
我が国の「デジタル・ガバメント実行計画」の成立に先立って本計画を推進し、航空身体検査証明制度の特徴を利用することによって、本人確認の信頼性を高めつつも、利便性が高く、疎結合を可能とする柔軟性の高いシステムを実現するとともに、行政システムにおいて泣き所となる「人物の同一性」特定について、データの蓄積に伴い特定精度が向上していく方式を考案、実現しました。また、クラウドと航空局内のシステムとを接続したハイブリッドシステムとして構築し、我が国政府の行政システムのクラウド利用のさきがけ的事例となりました。
本システムの実現には、全国の航空身体検査指定機関、エアライン、航空機使用事業者の皆様の理解と協力が不可欠でした。関係者の皆様に深くお礼申し上げます。
株式会社サイエンスインパクト
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